矯正が保険適用の場合はいくら?費用と保険が適応される3つの条件を紹介

歯列矯正を始める上で、気になるのが費用面です。高額な治療費用を少しでも保険で補填したいと思う方も多いかと思います。しかし、歯列矯正は基本的に自由診療となり、健康保険は適用されません。ただし、顎変形症などの生まれつきの疾患であれば、健康保険が適用されるケースもあります。

歯列矯正で保険が適用される症例と保険適用後の具体的な負担額、保険適用されない歯列矯正で治療費の負担を抑える方法について紹介します。

矯正治療に保険は適用される?

矯正治療に保険は適用される?

歯列矯正の費用は決して安くはないため、健康保険が適用できないか気になっている方も多いでしょう。結論からお伝えすると、歯列矯正は基本的に保険適用外で全額自己負担となります。健康保険は病気やケガの治療費の負担を軽減するための仕組みで、歯列矯正はどちらにも当てはまらない「歯並びの見た目を整える」審美目的であるためです。

ただし、一部の症例では、医師により治療が必要な疾病であると診断され、歯列矯正が保険適用になるケースがあります。

対象となる疾患の場合は保険適応になる

健康保険が適用されるのは、厚生労働大臣が定める53の疾患です。この疾患の症状に該当する方、または該当する可能性がある方は、あらかじめ口腔外科などの医療機関を受診することで、矯正費用が保険の対象となります。

下記の場合に限り保険診療の対象となります。

  • 「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療

  • 前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療

  • 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療

国に認可された医療機関での治療が必要

上記した保険適用される矯正歯科治療を行える医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。

この保険医療機関の名簿に関しては、地方厚生局ホームページに最新の情報が掲載されています。

保険適用の矯正治療にかかる費用はいくら?

保険適用の矯正治療にかかる費用

歯列矯正に保険が適用されるケースがわかりました。では、実際に保険適用になる場合、歯列矯正の費用はいくらかかるのでしょうか。

保険適用の矯正治療にかかる費用は症例によって異なるため具体的な金額を提示することはできませんが、一般的な症例の場合、3割負担で10万円以上になります。
手術が必要な顎変形症の場合は入院費もかかります。民間の医療保険に加入していれば、入院した場合はもちろん保険が適用されます。さらに子供の場合は自治体にもよりますが、小学生や中学生までは医療費の負担が0割で、日本の医療制度には後述する税制控除に有効な医療費控除や高額療養費制度も適用になります。

外科矯正に保険が適用される場合は3割が自己負担なので、下あごのみの手術で30万円、上あごと下あご両方の手術で40〜50万円が相場です。

さらにそこに、手術前後の矯正や入院費などがかかるため、トータルで60〜80万円が相場とされています。

一般的には、矯正費用は100万円程度必要とされているので、保険適用になると3割負担の30万円ほどで歯科矯正の治療ができます。

矯正が保険適応になるのはどんなとき?

矯正治療が保険適用になるのはどんなときか

保険適用の歯列矯正費用をみてきましたが、具体的にどのようなときに保険適用になるのでしょうか。

保険適用になるケースは以下の3パターンです。

  • 厚生労働大臣が定める疾患

  • 顎変形症

  • 永久歯萌出不全に起因した咬合異常

それぞれ詳しく見ていきましょう。

厚生労働大臣が定める疾患

  1. 唇顎口蓋裂

  2. ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)

  3. 鎖骨頭蓋骨異形成

  4. トリーチャ・コリンズ症候群

  5. ピエール・ロバン症候群

  6. ダウン症候群

  7. ラッセル・シルバー症候群

  8. ターナー症候群

  9. ベックウィズ・ウイーデマン症候群

  10. 顔面半側萎縮症

  11. 先天性ミオパチー

  12. 筋ジストロフィー

  13. 脊髄性筋委縮症

  14. 顔面半側肥大症

  15. エリス・ヴァンクレベルド症候群

  16. 軟骨形成不全症

  17. 外胚葉異形成症

  18. 神経線維腫症

  19. 基底細胞母斑症候群

  20. ヌーナン症候群

  21. マルファン症候群

  22. プラダー・ウィリー症候群

  23. 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)

  24. 大理石骨病

  25. 色素失調症

  26. 口腔・顔面・指趾症候群

  27. メビウス症候群

  28. 歌舞伎症候群

  29. クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群

  30. ウイリアムズ症候群

  31. ビンダー症候群

  32. スティックラー症候群

  33. 小舌症

  34. 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)

  35. 骨形成不全症

  36. フリーマン・シェルドン症候群

  37. ルビンスタイン・ティビ症候群

  38. 染色体欠失症候群

  39. ラーセン症候群

  40. 濃化異骨症

  41. 6歯以上の先天性部分無歯症

  42. CHARGE症候群

  43. マーシャル症候群

  44. 成長ホルモン分泌不全性低身長症

  45. ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)

  46. リング18症候群

  47. リンパ管腫

  48. 全前脳胞症

  49. クラインフェルター症候群

  50. 偽性低アルドステロン症

  51. ソトス症候群

  52. グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)

  53. 線維性骨異形成症

  54. スタージ・ウェーバ症候群

  55. ケルビズム

  56. 偽性副甲状腺機能低下症

  57. Ekman-Westborg-Julin症候群

  58. 常染色体重複症候群

  59. 巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)

  60. 毛 ・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)

  61. その他顎・口腔の先天異常

いずれも日常生活に関わる症状のため、矯正治療が保険適用となります。

顎変形症

上顎骨と下顎骨の位置関係のズレが大きく、矯正治療だけでは治らない咬み合わせを「顎変形症」といいます。治療には矯正治療に加え、外科手術による顎骨の移動が必要です。この治療法を「外科矯正治療」といいます。

顎変形症に対する矯正治療(外科手術をともなう矯正治療)には、保険が適用されます。

外科矯正治療例として以下の3パターンが挙げられます。

  • 骨格性下顎前突症

下顎骨が前方に位置する症例に対する治療法です。

下顎骨を口腔内から切断し、下顎骨を後退させる手術をします。

  • 骨格性上顎前突症  (下顎後退症 )

相対的に下顎骨が後方に位置する症例に対する治療法です。

下顎骨を口腔内から切断し、下顎骨を前方移動手術を行い、オトガイ部も前方へ移動させます。

  • 顔面非対称症例 (上下顎骨偏位) 

骨格的に下顎骨が右側へ偏位し、それに伴い上顎も右側へ傾斜しています。

上顎骨と下顎骨を口腔内から切断し、顔面非対称を改善させます。

歯列矯正治療だけでは治療が出来ず、顎骨の手術が必要となる場合に保険が適用となります。

永久歯萌出不全に起因した咬合異常

「永久歯萌出不全」とは、大人になっても永久歯が正常に生えてこない疾患のことです。
「埋伏歯開窓術」とは、上記のような疾患の治療に際し、歯茎を切開し歯茎の中に埋まったままの永久歯を露出させる手術のことです。

つまり、永久歯が3本以上生えてこないことにより咬合異常を発症している方のうち、歯茎の切開手術が必要とする方にのみ、保険適用内での矯正治療が可能になります。

この場合、「歯科矯正診断料算定の指定医療機関」が対象施設となります。

このような埋伏歯開窓術を伴う矯正治療の場合には公的医療保険が適用されます。

保険適用外の矯正治療は?

保険適用にならない矯正治療

歯列矯正が保険適用になるのはどんなときかみてきましたが、反対に保険適用外になってしまうのはどのようなケースなのでしょうか。

以下の2つが保険適用外になります。

  • 美容・審美目的の矯正

  • 軽度の不正咬合

基本的に歯列矯正は上記に該当することが多いです。詳しく見ていきましょう。

美容・審美目的の矯正

保険適用となる治療は、「健康や身体の機能性に影響がある場合のみ」です。一方で、歯列矯正は審美的な理由で行われる治療と言えます。

たとえば「見た目が良くないから歯列矯正治療を受けたい」とするのは審美的な目的とみなされます。

健康に深刻な影響を及ぼさない場合でも治療が行われるため、基本的に保険適用外です。

軽度の不正咬合

以下の場合、保険適用にはなりません。

  • 口腔機能の異常がない

顎の歪みが軽度で歯並びや噛み合わせに大きな異常がないものは顎変形症が適応にならないこともあり、保険適用になりません。

  • 不正咬合が顎の歪みと関係していない
    歯並びや噛み合わせの異常が顎の歪みによって引き起こされたものではない場合、顎変形症ではないため保険適用されません。

矯正治療の費用を抑える方法と注意点

矯正治療の費用を抑える方法と注意点

保険適用外のケースをみてきましたが、実は保険適用にならなかったとしても、歯列矯正の費用を抑える方法はいくつかあります。

  • 保険適用の可能性は事前に確認する

  • 医療費控除の活用

  • 分割払いの活用

これらを活用すれば、歯列矯正にかかる費用を抑えることが可能になります。

保険適用の可能性は事前に確認する

矯正治療を保険適応で受けるためには、国の定めるルールに基づいて、以下の条件をクリアする必要があるので、事前に確認しましょう。

  1. 保険の対象となる疾患に該当するか

  2. 保険で認められている治療器具を使用しているか

1において保険が適応される代表的なものは「顎変形症」です。顎変形症の矯正治療は、顎の外科手術(〜2週間程度の入院)が必要な症例です。

2の使用する器具について、マウスピース型の矯正装置は保険で認められておりません。「顎変形症」と診断された方をマウスピース矯正で治療すること自体は可能ですが、その場合は全て自由診療にて対応することとなります。

医療費控除の活用

歯列矯正の医療費控除の条件は審美的な理由ではなく、医療上噛み合わせに問題があると診断された場合、1年間総額が10万円を超えた場合に控除が適応されます。

医療費控除とは、1月1日から1年間における医療費が高額となった場合、所得税で控除が受けられる制度を指します。

総所得金額が200万円以上であった場合は、100,000円以上の医療費支払いにて控除を受けられます。200万円未満の方であれば、総所得金額の5%分の金額が控除対象です。
ただし、保険金などの支給を受けた場合は、支給金額を差し引かなければなりません。

いずれにしても、医療費控除を利用できれば所得税の還付を受けることができ、結果的に治療費を抑えられます。

関連記事:歯列矯正の医療費控除が適用される条件とは?手続きのやり方や必要なものを紹介

分割払いの活用

クレジットカードの分割払いでも支払いの負担を減らすことができます。
歯列矯正に対応する歯科医院で、デンタルローンとともに多く採用されている支払い方法がクレジットカード払いです。クレジットカードであれば、後から自分で分割払いにできます。

また、クレジットカード払いの大きな魅力であるのが、ポイントが貯まることです。
一般的なカードでは0.5%分のポイントが貯まります。100万円の治療費を支払った場合、5,000円分ポイントが貯まるため、結果的に歯列矯正の治療費が抑えられます。

矯正治療の保険適用に関するよくある質問

保険適用の矯正治療についてのよくある質問

歯列矯正治療の費用を抑える方法と注意点については以上です。ここからは矯正治療の保険適用に関してよくある質問をまとめました。

  • 矯正治療の費用は全額保険でカバーされる?

  • 矯正治療を始める前に何を確認すべきか?

  • 認可された医療機関の探し方は?

  • 保険適用外の治療を選んだ場合の費用は?

保険適用の矯正治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

矯正治療の費用は全額保険でカバーされる?

保険適用とみなされた場合は3割負担になります。ただし、歯列矯正は基本的に保険適用の対象外です。一部の、厚生労働省が定めた特定の条件を満たした症例であれば、保険適用の対象になります。

一般的に歯列矯正は、矯正費用は100万円程度必要とされていますので、保険適用とみなされた場合、その3割負担の保険適用後、30万円ほどで歯列矯正の治療ができます。

矯正治療を始める前に何を確認すべきか?

まず、自分が保険適用の条件を満たしているのか、近くに対応してるクリニックがあるのかを確認しましょう。

歯科医師の診断により、条件を満たしていれば、保険適用内の費用で矯正治療を受けることが可能です。その場合「歯科矯正診断料算定の指定医療機関」である施設(口腔外科などがある医院)で治療をしなければならないなど細かく指定される場合があるので注意が必要です。

認可された医療機関の探し方は?

下記の手順で探すことができます。

  1. 地方厚生局」の8つの厚生(支)局 から、ご自身の地域の厚生(支)局のホームページにアクセスする。

  2. サイト内検索に「施設基準届出受理医療機関名簿」を入力。

  3. 県別の受理医療機関より歯科のPDFを探す。

  4. そのPDFから「矯診」あるいは「顎診」の指定医療機関を探す。

保険適用外の治療を選んだ場合の費用は?

保険適用外の歯列矯正の相場は以下のとおりです。

ワイヤー表側矯正

全体:60万円〜130万円

部分:30万円〜60万円

ワイヤー裏側矯正

全体:100万円〜170万円

部分:40万円〜70万円

ハーフリンガル矯正

全体:80万円〜150万円

部分:35万円〜65万円

マウスピース矯正

全体:60万円〜100万円

部分:10万円〜40万円

まとめ

まとめ

歯列矯正は高額です。健康保険が適用できるかどうか、矯正してみたいと思っていても、二の足を踏む方は多いでしょう。しかし、症状によっては矯正治療でも保険適用となる場合もあります。保険診療で矯正治療が受けられれば、治療費負担がぐっと安くなる可能性も大いにあります。

保険適用となる治療は、国が認めた特定の症状の治療に対して行われます。

  • ・永久歯が元々6本以上ない場合

  • ・顎変形症(極端な受け口や出っ歯、顎のずれなど)で外科手術をする場合

  • ・唇顎口蓋裂など、国が定めた先天性異常

上記の症状は飲食や発音など通常の生活に大きな支障が出るだけでなく、放置をすると体調不良や病気のリスクがあります。そのため「審美目的」ではなく「疾病のための治療」となり、保険の適用が可能です。これらを医師が判断した場合、通常の虫歯の治療などでの保険診療と同じく医療費の自己負担額は3割となります。(年齢や世帯所得によっても変動があります。)

ただし、どこの医療機関でも保険診療を受けられるという訳ではありません。歯列矯正の保険診療は、国が「自立支援医療機関」と定めた医療機関でないと行えないので注意しましょう。

また、保険適用にならない場合でも、医療費控除の活用分割での支払方法を選ぶなどで、歯列矯正費用を安く抑えることも可能です。

歯列矯正は高額なものになりますので、「歯の総合予約サイト~BEAUTEETH」で自分に合ったクリニックを探してカウンセリング相談してみるのも良いでしょう。