歯列矯正の医療費控除が適用される条件とは?手続きのやり方や必要なものを紹介
噛み合わせや歯並びの状態によって高額となる歯列矯正の費用は、医療費控除を活用することで支払った税金の一部が還付される場合があります。
しかし、歯列矯正に医療費控除が使えると知っていても、どんな条件で適用できるか理解していない方は多いでしょう。
この記事では歯列矯正の費用負担を減らせるように、医療費控除の適用条件や必要な手続きを紹介します。
関連記事:歯科矯正(歯列矯正)で高額療養費制度は使える?利用条件や申請方法も紹介
歯列矯正の費用は場合によって医療費控除の対象となる
医療費控除は1年間にかかった医療費が10万円(総所得額が200万円未満の方は総所得額の5%)を超えた場合に、納めた税金の一部が還付される制度です。
歯列矯正は通常10万円以上かかる事が多いため、控除の対象になると支払う税金を抑えられます。
医療費控除を受けるには、確定申告での申請が必要です。医療費を支払った年に申告を忘れていても、5年前までさかのぼって控除を受けられます。
歯列矯正で医療費控除が適用される条件とは?
歯列矯正で医療費控除が適用される条件を紹介します。
- 1年間で世帯医療費が10万円以上であること
- 大人の場合:審美目的ではなく医療目的で矯正が必要と認められていること
- 子どもの場合:発育段階で今後の成長に関わる治療であること
1年間で世帯医療費が10万円以上であること
医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円以上である場合に適用できます。
生計を共にする家族の医療費も対象となるのが特徴です。例えば、本人の治療に7万円、家族の治療に3万円がかかった場合にも医療費控除を適用できます。
また、総所得額が200万円未満の方は医療費が総所得額の5%を超えると医療費控除の適用が可能です。
医療費控除を受ける場合は、生計を共にする家族の医療費も合計して基準額を超えているか確認しましょう。
大人の場合:審美目的ではなく医療目的で矯正が必要と認められていること
大人の歯列矯正で医療費控除を受けるには、審美目的ではなく医療目的で矯正が必要と認められることが条件です。「機能性向上が目的であるか」が適用の基準となります。
例えば、噛み合わせや歯列の乱れが原因でものを上手く噛めない、発音が難しいなどの場合が対象です。
歯列矯正が医療費控除の対象になるかは、治療の目的によって異なります。見た目の改善のみを目的とした歯列矯正は、医療費控除の対象とならないので注意してください。
子どもの場合:発育段階で今後の成長に関わる治療であること
子どもの歯列矯正は、主に「永久歯の歯並びや骨格の問題改善」が目的です。大人と比べて、医療費控除の対象となる可能性が高くなります。
現時点で機能性に問題がなくても、治療しないと成長に悪影響を及ぼすおそれがある場合も医療費控除の対象です。
また、歯列矯正は保険適用となる場合があり、治療にかかる費用を減らせます。医療費控除を適用できない方は、保険適用になるかも確認しましょう。
歯列矯正の医療費控除に含まれる費用・含まれない費用
歯列矯正では医療費控除を適用できますが、すべての医療費が控除の対象となるわけではありません。
医療費控除に含まれる費用は、大きく分けて治療費と通院時の交通費のみです。
医療費控除に含まれる費用 | 含まれない費用 |
・診療費
・検査費 ・矯正装置の費用 ・調整料 ・処置料 ・医薬品代(治療目的) ・交通費(公共交通機関) |
・ガソリン代
・駐車場代 ・医薬品代(予防目的) ・金利 ・診断書発行 |
歯列矯正の開始に必要な診療費や検査費、矯正装置の費用などは医療費控除の対象となります。
通院時の交通費は公共交通機関を利用した場合のみ対象となるので、電車や路線バスの利用のみが対象です。
子どもの通院に保護者が付き添った場合の交通費も、医療費控除に含まれます。ただし、車で通院した際のガソリン代や駐車場代は認められません。
また、支払いのために組んだローンの金利や診断書発行にかかる費用も、医療費控除に含まれないので注意しましょう。
医療費控除の対象となる歯列矯正の費用計算のやり方
医療費控除の対象となる歯列矯正の費用計算は、総所得金額が200万円以上か未満かで方法が異なります。
総所得金額 | 控除対象額を求める計算式 |
200万円以上 | 含まれる医療費合計 - 保険金による補填金額 - 100,000 |
200万円未満 | 含まれる医療費合計 - 保険金による補填金額 - (総所得金額 × 5%) |
総所得金額が200万円以上の場合は、含まれる医療費合計から保険金による補填金額と10万円を引いてください。総所得金額が200万円未満の場合は、含まれる医療費合計から保険金による補填金額と総所得額の5%を引きます。
例えば、総所得額が500万円で年間の医療費合計が80万円、保険金による補填が20万円の場合、医療費控除額は50万円です。
また、医療費控除額の上限は200万円までと決まっており、上限を超えた分には適用できません。
歯列矯正で医療費控除を受ける際に必要な書類・手続き
歯列矯正で医療費控除を受けるには、必要な書類をそろえた上で確定申告を行う必要があります。確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日までの1ヶ月間です。
医療費控除を受ける方は、申告期間までに以下の書類をそろえましょう。
- 源泉徴収票(給与所得者のみ)
- 病院の領収書
- 薬局の領収書
- デンタルローンの契約書
- 医療補助金に関する書類
- 確定申告書
- 申告者の銀行口座番号
- 印鑑
- 診断書
給与所得者かどうかで手続き方法が異なるので、それぞれ紹介します。
給与所得者に該当する場合
給与所得者が医療費控除を受けるには「医療費控除の明細書」を作成し、居住地の所轄税務署に提出します。医療費控除の明細書を作成する際に、領収書が必要なので処分せずに保管しましょう。
領収書に記載された金額から、年間の医療費を計算します。医療費を計算する際に、交通費の領収書は必要ありません。
課税所得金額によって控除額と税率が異なるので、以下を参考にしてください。
所得合計金額(課税所得額) | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
課税所得金額から該当する税率を探し、所得税額を求めます。また、所得税額に2.1%をかけて復興特別所得税額を計算し、源泉徴収票を参考に確定申告書を記入しましょう。
給与所得者に該当しない場合
給与所得者以外が医療費控除を受ける際は、確定申告時に医療費控除欄を記入します。
給与所得者以外の方は、毎年行っている確定申告で医療費控除欄を記入するだけで手続き完了です。医療費控除欄に記入する金額は、給与所得者と同じ方法で計算できます。
確定申告の準備を終えたら、申告内容を証明するために領収書を用意して申告時に提示してください。
歯列矯正で医療費控除を受ける際に知っておくこと
歯列矯正で医療費控除を受ける方は、確定申告に備えて細かいポイントを把握しましょう。
- 申請するためには領収書を保管する必要がある
- 過去5年分をさかのぼって申請できる
- ローン払い・クレジット払いでも対象になる可能性がある
申請するためには領収書を保管する必要がある
歯列矯正で医療費控除を受けるには、医療費の領収書を保管する必要があります。
医療費の領収書は確定申告で医療費控除を申請する際に必須です。確定申告に必要な金額を計算する際にも領収書を使います。誤って処分しないよう注意してください。
また、医療費控除の申請に使用した領収書は、5年間の保管が義務付けられています。確定申告後も無くさず大切に保管しましょう。
過去5年分をさかのぼって申請できる
医療費控除は過去5年分をさかのぼって申請できます。過去に控除の対象となる医療費の支払いがあった場合には、5年以内であれば「更正の請求」により還付が受けられます。
更正の請求とは納税した税額が多すぎた場合に、適切な納税額に調整する手続きです。確定申告を行ってから5年以内に更正の請求をすれば、税金の還付が受けられます。
ただし、給与所得者に該当しない方が青色申告特別控除を受ける場合は、従来の期間でなければ還付申告を受けられないので注意しましょう。
ローン払い・クレジット払いでも対象になる可能性がある
歯列矯正の医療費をローン・クレジットカードで支払った場合でも、医療費控除の対象になる可能性があります。
ただし、ローン払い・クレジット払いを利用した場合は、支払日が重要です。年をまたいで支払いがあると、実際の支払いがあった年の医療費として申告しなければなりません。
例えば、2023年から2024年に支払いがあった場合、2023年の医療費として申告できるのは2023年12月末までの支払い分のみです。
年をまたいだ支払いでは、各年度の医療費を把握し忘れずに申告してください。
歯列矯正の医療費控除を申請してから受け取るまでの流れ
歯列矯正で医療費控除を申請してから受け取るまでの流れを紹介します。
- 必要書類を収集する
- 費用の内訳や控除額を確認する
- 医療費明細書を作成する
- 確定申告書を記入する
- 還付金の振り込みを確認する
まずは医療費控除の申請に必要な書類を集めます。書類に抜けがあると申請が通らない場合があるため注意してください。
医療費の領収書から年間の医療費を算出し、確定申告に必要な医療費明細書を作成します。領収書は申告後5年間の保管が必要なため、無くさないようにしましょう。
2月16日~3月15日の期間に確定申告を行えば、1ヶ月程度で還付金が指定口座に振り込まれます。
歯列矯正の医療費控除に関してよくある質問
歯列矯正の医療費控除に関してよくある質問を紹介します。
- 医療費控除をいつまでに手続きすればいいですか?
- 医療費控除は誰が申請しても大丈夫ですか?
- 医療費控除の還付金がいくら戻るかを計算する方法はありますか?
医療費控除をいつまでに手続きをすればいいですか?
医療費控除は申告したい年の翌年1月から申請できます。
また、医療費を支払った年の翌年から5年以内であれば、いつでも申告が可能です。つまり、2023年に支払った医療費の控除を受ける場合、2028年12月31日まで申請できます。
過去に医療費控除の申請を忘れていた場合は、更正の請求で還付金を受け取りましょう。
医療費控除は誰が申請しても大丈夫ですか?
医療費控除は支払った税金に対する還付が受けられるので、収入があり所得税を納めている方が申請手続きを行います。
共働きで扶養控除から外れている夫婦の場合は、どちらが申請しても問題ありません。還付金額は医療費控除額×税率で決まるため、所得の多いほうが申請することで還付金額が高くなります。
医療費控除の還付金でいくら戻るかを計算する方法はありますか?
医療費控除の還付金は、医療費控除額×税率で金額が決まります。還付金の計算に必要な式は以下の通りです。
- 医療費控除額=含まれる医療費合計 - 保険金による補填金額 -10万円
- 還付金額=医療費控除額×税率
所得合計金額(課税所得額) | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、総所得額500万円、年間の医療費80万円、保険金による補填額20万円の場合、医療費控除額は50万円です。上の表から総所得額500万円の税率は20%なので、還付金額は10万円と計算できます。
参考 所得税の税率|国税庁
歯列矯正にかかる費用が高すぎる場合は高額療養費制度の利用も検討
歯列矯正にかかる費用が高すぎる場合は、高額療養費制度の利用も検討しましょう。
高額療養費制度とは、1ヶ月に支払った医療費の自己負担額が高額になった場合に、上限額を超えた金額の払い戻しが受けられる制度です。
高額療養費制度を利用するには、1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えている必要があります。制度の対象は保険適用となる医療費のみです。保険が適用されない医療費は自己負担となります。
高額療養費制度は払い戻しが受けられる仕組みであり、高額であっても一時的に医療費を支払わなければなりません。金銭的な負担が大きい場合は、限度額適用認定証を申請することで1ヶ月の支払い金額を自己負担限度額まで抑えられます。
医療費控除を活用して歯列矯正の費用負担を減らしましょう
歯列矯正は、噛み合わせや歯列の状態によって費用が高額になります。費用負担を減らしたいなら、医療費控除を活用するのがおすすめです。
控除の対象となる医療費が年間で10万円を超えているなら、医療費控除を適用できます。医療費控除を受けるには、確定申告での申請が必要です。
また、医療費控除は過去5年分であれば、さかのぼって申請できます。過去5年間に歯列矯正の治療を受けた方も、制度を活用しましょう。
医療費控除を活用して歯列矯正を始めたい方は、「歯科総合予約サイト〜BEAUTEETH」を参考にして自分に合ったクリニックを探してみてください。