歯を抜く矯正のデメリットとは?抜歯したほうがいい場合や非抜歯のリスクも紹介
歯列矯正で抜歯を行うデメリットは、抜歯した部分に痛みや腫れが出現したり、治療期間が長くなったりすることです。
歯列矯正で抜歯が必要と言われ「抜歯は何となく怖い」「できれば抜歯はしたくない」と思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、歯列矯正は抜歯が必要なケースと非抜歯で行えるケースがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
この記事では歯列矯正の抜歯で不安に思っている方向けに、抜歯するメリットとデメリット、非抜歯のリスクについて紹介します。
歯列矯正で歯を抜くデメリットを紹介
歯列矯正で抜歯するデメリットを3つ紹介します。
- 抜歯した部分に痛みや腫れが出ることがある
- 歯の移動距離が長くなり治療期間が長引きやすい
- 抜歯の処置に費用がかかる
抜歯した部分に痛みや腫れが出ることがある
抜歯後は一時的に痛みや腫れが生じることがあります。しかし、2~3日で痛みや腫れは治まることがほとんどです。
以下のポイントに気をつけると痛みや腫れを緩和しやすくなります。
- 抜歯した頬を冷やす
- 処方された痛み止めを服用する
- 激しい運動をせず安静に過ごす
- アルコールを控える
- 口腔内を清潔に保つ
通常の抜歯ではなく親知らずの抜歯など特殊な処置の場合は痛みが強く出るケースもあるため注意しましょう。
歯の移動距離が長くなり治療期間が長引きやすい
抜歯すると歯の移動距離が長くなり、歯列矯正の治療期間が長引く場合があります。
抜歯は歯列に十分なスペースを作り、効率的に歯を移動させるための処置です。
しかし、歯列に大きな空間が生まれると、歯を移動する距離が長くなるため、治療期間が長引きやすくなります。
強引に歯を動かすと歯が傾いたり抜けやすくなったりするため、無理に期間を短くすることもできません。
抜歯の処置に費用がかかる
抜歯をする場合、歯列矯正とは別に費用がかかります。
歯列矯正の際の抜歯は自由診療にあたるため、5千円〜1万円程度の追加費用が必要です。主な抜歯対象は左右4本の小臼歯と親知らずで合計8本ありますが、何本抜歯するかは症例によって異なります。
また、歯列矯正のための抜歯は医療費控除の対象外となるため、注意しましょう。
親知らずが虫歯や歯周病の原因となり抜歯が必要と判断された場合は、保険適用で処置できる可能性があります。保険適用の可否は、診察時に医師へ確認しましょう。
矯正で歯を抜くメリット
歯列矯正で抜歯するメリットを3つ紹介します。
- 歯を動かすスペースを確保できて複雑な症例も対応しやすくなる
- 虫歯や歯周病になりかけの歯を事前に取り除ける
- 口元のバランスが整い親知らずもきれいに生えやすくなる
歯を動かすスペースを確保できて複雑な症例も対応しやすくなる
歯列矯正で抜歯すると複雑な症例でも治療できるようになります。
抜歯することで歯を動かすための十分なスペースを確保し、重度な出っ歯や受け口などの複雑な症例でも治療が可能です。
また、抜歯すると歯が想定通りに動く可能性が高まるため、治療計画が立てやすくなり、治療がスムーズに進みやすいです。
虫歯や歯周病になりかけの歯を事前に取り除ける
虫歯や歯周病になりかけている歯を治療前に取り除けることも抜歯のメリットです。
歯列矯正を始める時に虫歯や歯周病がある場合は、矯正前に治療する必要があるため、通院する期間が長引きます。
また、歯列矯正中に虫歯や歯周病になると、歯列矯正を中断して病気の治療をする場合があるため注意が必要です。親知らずをはじめ日常のケアが難しい歯は清潔を保ちにくく、虫歯や歯周病になるリスクがあります。
歯列矯正に影響が出そうな歯を含めて、リスクがある歯を取り除いておくと歯や口腔内の衛生環境を保ちやすくなります。
口元のバランスが整い親知らずもきれいに生えやすくなる
抜歯すると口元のバランスが整い、親知らずもきれいに生えやすくなります。
顎が小さくスペースの確保が難しい方が抜歯せずに歯列矯正をすると、前歯が前方に押し出されやすいです。前歯が前方に押し出されると、口元が前方に飛び出して横顔のラインが崩れるリスクがあります。
抜歯し歯列に空間を作ると前歯が飛び出すリスクが軽減され、口元のバランスが整いやすくなります。
また、抜歯すると歯が生えてくる十分なスペースがとれるため、親知らずがきれいに生えやすいです。
親知らずがきれいに生えない原因の1つに歯列のスペース不足があげられます。親知らずの生え方が悪いと健康面で悪影響を与えることがあるため、予防の意味で早めに抜歯を検討するのもよいでしょう。
矯正の際に抜歯したほうがいい歯はどれ?
歯列矯正で抜歯する場合は、噛み合わせに影響の少ない前歯中央から4本目の「第一小臼歯」または5本目の「第二小臼歯」を抜きます。
小臼歯が選ばれる理由は、他の歯への負担を分散する犬歯や食べ物を噛み切る前歯に比べて機能的な影響が少ないためです。また、歯の移動距離が短いため治療期間も比較的短く済みます。
親知らずが歯列矯正の妨げになる場合や矯正後の歯並びを乱す恐れがある場合には、親知らずを抜くこともあります。
どこの歯を抜くかは医師の意見を仰ぎ、理由も確認しておきましょう。
関連記事:矯正で抜歯が必要な4つのケース|対象となる歯の特徴や実施タイミングを紹介
歯列矯正で歯を抜く場合の治療の流れを紹介
歯列矯正で抜歯が必要な場合は、以下のような流れで治療を行います。
- カウンセリングを受ける
- 精密検査を受ける
- 医師から治療方針の説明を受け、同意する
- 抜歯する
- 歯列矯正を開始する
- リテーナーを装着する
- 定期的な通院でメンテナンスを受ける
抜歯が必要な歯列矯正の場合は、矯正の開始前に抜歯を行うのが基本の流れです。
また、抜歯から矯正装置の装着までは通常1週間〜1ヶ月ほど間隔を空けます。これは、抜歯によって歯茎に空いた穴が塞がるのを待つためです。
歯列矯正が終了した後は、歯並びが元に戻らないようにリテーナーを装着して過ごします。
歯列矯正で抜歯を伴った場合は通院を半年〜1年程度間隔で行い、定期メンテナンスを受けましょう。
矯正で歯を抜くのは一般的だが非抜歯のやり方もある
近年では、非抜歯で歯列矯正を行うケースも増えてきました。
非抜歯で歯列矯正ができるケースは歯列が大きく乱れておらず、デコボコの程度が比較的小さい症例です。
また、歯列が不完全で骨格が成長中の子どもの場合は、大人よりも歯列矯正がスムーズに進みやすいです。
子どもの頃から永久歯がきれいに並ぶ土台作りをしておけば、大人になってから矯正が必要になった場合でも非抜歯で済む可能性が高まります。
歯を抜かずに歯列矯正する治療法
抜歯せずに歯列矯正する方法には以下の3つがあります。
- 歯の側面を削る(ストリッピング)
- 奥歯を後ろ側に動かす
- あご(歯列)を広げる
歯の側面を削る(ストリッピング)
歯の側面を削るストリッピングと呼ばれるという処置で抜歯せずに歯列矯正できるケースがあります。
ストリッピングが行われるのは軽度な歯並びの問題で、前歯が少し大きくて歯列に入りきらない場合です。削る厚みは0.2〜0.6mmでエナメル質の厚みの半分以下のため、虫歯や知覚過敏を誘発することもありません。
複数の歯を削っても抜歯ほど大きなスペースを作れないため、軽度な症例のみ有効です。
奥歯を後ろ側に動かす
奥歯を後ろに動かしてスペースを作ることで、他の歯も順に奥へ移動させられる場合、非抜歯での歯列矯正が可能です。
左右の奥歯を移動させると5mm前後のスペースが確保できます。しかし、歯を支える土台の骨がない部分へは移動できません。歯列にある程度の余裕があることが条件になります。
また、奥歯を後ろ側に動かす場合は親知らずを抜歯することがほとんどです。非抜歯は「親知らず以外の歯を抜歯しない」という意味のため、完全な非抜歯にこだわる場合は認識の違いに注意しましょう。
あご(歯列)を広げる
あご(歯列)を拡大して歯の土台のスペースに余裕を作ることで、抜歯せずに歯列矯正できる場合があります。
歯はU字型に湾曲した土台に生えており、この土台を外側に広げることで歯が並ぶスペースの確保が可能です。
しかし、あごの拡大の程度はあごの大きさや形などにより異なり、成長が終わった大人では拡大の範囲に限界があります。また、上あごは比較的拡大しやすいですが、下あごの拡大は難しいため適用できる症例は限られています。
後悔する前に知りたい非抜歯で矯正するリスク
後悔しないために、非抜歯で歯列矯正する3つのリスクを知っておきましょう。
- 口元が出っ張り横顔のEラインが崩れる
- 歯肉に負荷がかかり下がってしまう
- 歯の動くスペースが狭く後戻りしやすくなる
口元が出っ張り横顔のEラインが崩れる
非抜歯で歯列矯正すると横顔のEラインが崩れるリスクがあります。これは入りきらなかった前歯が前に出て口元がEラインからはみ出してしまうためです。
Eラインとは
オトガイ部(下あごの突端部)と鼻先を結ぶ線のことで、上唇と下唇がこの線上やや内側にある口元が理想的な美しい横顔として歯科医師ロバート・リケッツが1954年に提唱したものです。
引用:大阪大学歯学部附属病院
非抜歯にこだわりすぎると口元や見た目の変化を見逃しがちです。歯並びや噛み合わせだけでなく、口元や見た目の変化も考慮して治療計画を立てましょう。
歯肉に負荷がかかり下がってしまう
非抜歯で歯列矯正すると歯肉に負担がかかり、歯肉退縮が起きるリスクがあります。
歯肉退縮とは歯肉が下がることです。歯肉退縮が進行すると歯が長く見えたり、歯の隙間が大きく広がったりします。
また、知覚過敏や歯周病、虫歯が起こりやすくなるため要注意です。進行すると最悪の場合、歯が抜けやすくなります。
歯肉退縮は歯肉に負荷がかかることで起こるため、歯列矯正全般で発生する症状です。歯列矯正の場合、狭いスペースに歯を無理やり並べようとすると歯肉退縮が出現するリスクが高まります。
歯の動くスペースが狭く後戻りしやすくなる
無理な非抜歯の歯列矯正をすると「後戻り」をしやすくなります。「後戻り」とは歯列矯正完了後に歯並びが元の状態に戻ることです。
後戻りが起こると再び歯列矯正が必要になり、余分な時間がかかります。また、歯科医院の規定によっては再矯正の費用が必要です。
一方で非抜歯の歯列矯正に適した症例では、歯の移動距離が短く済むため後戻りが起きにくくなることがあります。
歯列矯正で歯を抜くデメリットに不安を感じたらカウンセリングを受けましょう
歯列矯正には抜歯が必要なケースと非抜歯で行えるケースがあります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、慎重に治療計画を立てましょう。
「抜歯はしたくない」「抜歯は何となく怖い」と不安を感じている方はまず、医師のカウンセリングを受けるのがおすすめです。自分の症例を見てもらい、医師と一緒に治療計画を立てることで失敗するリスクを減らせます。
歯列矯正の抜歯のメリットやデメリットについて気になった方は、「歯の総合予約サイト〜BEAUTEETH」のショート動画を参考にして、自分に合ったクリニックを探してみましょう。